「自分ならもっと面白いものが作れる」
悩むことを恐れずに、夢に向かって情熱を持ち続けていくこと
名誉教育顧問
マット鈴木氏
MATT SUZUKI
ビジュアルデベロップメントアーティスト、特殊ビジュアル効果部門で米・エミー賞を受賞。【代表作】アバター2(未公開)、ジャングルクルーズ、ゴジラVSコング、ハーレクイーンの華麗なる覚醒、ムーラン、ジェミニマン、移動都市/モータル・エンジン、アリータ:バトル・エンジェル、メイズ・ランナー3、モアナと伝説の海、ズートピア、ベイマックス、アナと雪の女王、シュガー・ラッシュ、塔の上のラプンツェル、アバター、タンタンの冒険ユニコーン号の秘密、くまのプーさん、ライオン・キング/ディズニーデジタル3D、ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛、魔法にかけられて、など。
スーパーCGクリエイター専攻1年
日高駿さん
アニメーション専攻1年
深野真央さん
ゲームグラフィックデザイナー専攻2年
小野康平さん
業界を目指したきっかけは新しいものづくりへの情熱
鈴木氏 この業界を目指そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
小野 小さい頃から積み木や粘土でものを作るのが好きで、ゼロから何かを作っていく仕事に就きたいと思って、この学校を選びました。
日高 子どもの頃から親の影響で映画をたくさん観ていたのですが、特に映画『スター・ウォーズ』シリーズの世界観に感動したことがきっかけで、映画で使われているようなCGを学びたいと思いました。そして自分が作ったら、もっと面白いものが作れるんじゃないかと思って…。
鈴木氏 「自分が作ったほうが面白いものができる」という感覚は、この仕事をしていく上で、とても大事だと思いますよ。
深野 私は絵を描くのが好きで、高校生の時にアニメーション映画『夏目友人帳』を観て、こんなアニメを自分でも作りたいと思ったことがきっかけです。
鈴木氏 私もまさに3人が混じったような感じです。小さい頃からものを作るのが好きで、映画もよく観ていて、絵を描くのも好きでした。皆さんも、そこを起点に新しいものを作り出して、未来を切り開いていってほしいと思います。ディズニーで働いている人たちも、やりたいという気持ち「パッション(情熱)」を持ち続けて、好きな仕事をつかんでいます。決して遠い世界の話ではありません。皆さんに可能性があると思います。
プロの仕事や考え方を知ること
日高 先生の特別講義を聞いて、映画でものを動かす時に、「進行方向がどちらだから、どう作るべきか」など、プロの方たちがいろんなことを考えながら作っているのが分かって、とても興味深かったです。
深野 私も実写とアニメは違うと思っていましたけど、根本的な考え方は同じことが分かりました。
小野 CGを制作する時に、「普段、人が目にしているものはちょっとでも違和感があると、すぐ気付かれる」という言葉にハッとしました。これから、自分が作る時に、そのことを意識しようと思います。
鈴木氏 講義の後に皆さんの作品も見せてもらいましたけど、クオリティーが高くて驚きました。だからこそ、普段なら言わないような細かい部分までアドバイスをしましたが、就職の時にはそういう細かな部分で、実力の差が出てきます。採用の担当者はどこまで気をつかって作品を仕上げてくるのかをしっかり見て、評価しているので、妥協せずに作り込んでほしいと思います。
日本人がもっと世界にはばたいて活躍するには?
小野 講義の中で、自分が好きな映画『スパイダーマン』のサム・ライミ氏と先生が知り合いというのを聞いて、そんなすごい方の話がこんなに近くで聞けるなんて、今とても感動しています。
鈴木氏 それは良かった。少しでも身近に感じてもらえたら嬉しいですね。ディズニーのスタジオの玄関には、大きな世界地図が貼ってあるのですが、そこにスタッフが自分たちの出身地に印を付けています。多いのがアメリカで、次にロシア、中国、韓国が多いんですけど、日本がすごく少ない。日本人は真面目で頭も良くて、実力はあるのに英語力がなくて差がついてしまっているのが、とても惜しいと感じています。
日高 映画の制作で面白い国はありますか。
鈴木氏 ニュージーランドは日本人に近い感覚があるので、ハリウッドを目指すための良いステップになると思います。英語もしっかり学んでほしい。映像業界で使う単語や言い回しがあるので、まずはそれを重点的に覚えていくと英語力も伸びてくるのではないでしょうか。
悩むことで新しい発見が生まれる恐れずにチャレンジを!
鈴木氏 深野さんと日高さんは1年生だけど、今ものづくりが楽しくなっている時期なのでは?
深野 はい。作画の授業で、自分の作ったものが動く瞬間が感動的でした。
日高 CGを学ぶために工業高校に進学したのですが、この学校に入学して設備のレベルがまったく違って驚きました。授業では毎回、「新しいことを学んでいるんだ!」という高揚感があります。
鈴木氏 プロが使うような設備を使うと、難しいことも簡単にできてしまうことがあって驚くよね。小野さんは2年生ですが、どうですか。
小野 3DCGの授業は、あっという間に時間が過ぎていきます。知らない知識や技術を教えてもらえて、できることがどんどん増えてきています。
鈴木氏 この学校は私が学んだアメリカ・カリフォルニア州にある「アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン」と似ていて、産業界とのつながりが強い。まさに明日から使える実践力が身に付くと思います。企業プロジェクトでは、自分の作品をアピールするためのプレゼンテーションも学べるし、就職活動などでも大きな強みになると思います。
小野 学生時代にやっておくべきことは何でしょうか。
鈴木氏 好きなものをとにかく作りまくってほしい。がむしゃらにやったことは、きっと将来役に立つはずです。好きなことへの熱量があればあるほど、いつかその頑張りが認められると思います。
日高 ただ、制作の途中で「これでいいのかな」と悩んで止まってしまうことが多くあります。
鈴木氏 あるよね。でも悩むことは、実はいいプロセス!もし、突飛なものができ上がったとしても、それは誰もやったことがないものを生み出そうとした結果だと思います。自信を持ってほしい。
深野 私はデッサンが苦手で、どうしたら立体感が出るのか悩んでいます。
鈴木氏 人物が空間に存在することを意識してみたらどうだろう。実際にディズニーではキャラクターを粘土などで作って、3Dの感覚を身に付けるようにしています。そういう練習は必要だと思います。
小野 ゲームの場合、ユーザーが動かすという効率性が求められ、面白くないデザインになってしまうことが多くあります。デザイン性としての面白さと、実用性や効率性のバランスはどうされていますか?
鈴木氏 自分が少しずつでも面白いと思って、それを作った時のことを思い起こして、最大限にそのアイデアを自身で愛して売り込むというのが大切だと思います。夢を売る仕事なのだから、面白いものを作りましょう!この業界は、大きな変革期にあって、映画はストリーミングが主流になり、これからAIやVR等の新しい技術もあたり前のように使われていくでしょう。でもそれだけに新しい発想が必要だし、若い人にもチャンスがたくさんある。一緒に世界で活躍できる仲間が増えることを期待しています。
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