時代が求める”遊び”を創造し、
世界中のユーザーを感動体験でつないでいく
「ハンティングアクションRPG『モンスターギア』の素材を使って新しいバトルシステムのゲームを制作する」という課題を受け、学生たちは2人1組の少人数チームで企画開発を実践。セガのプロデューサーとして多様な側面からゲームビジネスに携わる西山氏とともに、ゲームづくりのこれからを考えていく。
株式会社 セガ
ビジネス開発本部 ビジネスプロデューサー
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
西山 泰弘氏
YASUHIRO NISHIYAMA
新卒でセガに入社。開発系から少しずつビジネス系のプロデューサーへとシフトし、ゲーム開発を進めるだけでなく、新規事業を提案して事業化を図るなど、「便利屋」と自称するようにその活動は多岐にわたる。その多彩な取り組みからさまざまな分野とのつながりを築いており、教育・研究機関とも広く関わりを持っている。
● まず西山さんの通常業務と、学生たちとの関わりについてお聞かせください。
西山氏 セガでは、ゲームづくりの最前線となる現場で、皆さんも知っているようなアーケードやモバイルのゲームプロデュースに携わってきました。その後は、そこで培ったさまざまな経験を活かし、ゴルフ事業やカジノ事業の立ち上げなどといったゲーム以外の分野における事業支援を皮切りに、AIなどの新しいテック企業とセガをつなげる投資支援など、ゲーム会社の社員としては珍しいくらいの幅広い分野のビジネスプロデュースをいまは担当しています。
「プロデューサー」という立場は、いろいろな業界や知識を持った人たちと一緒に仕事をすることができるチャンスが多く、それがとても刺激的であり、そこから新しいことを考え、生み出していくことが得意でもあったことから、今回、若い皆さんと一緒にモノづくりに携われるという産学連携のプロジェクトにも関われたものだと思っています。私のこれまでの経験を通じて、皆さんの取り組みに対してさまざまなアドバイスができるかと思っています。今日はそれを聞いて、皆さんが「なるほど」と、新しい視点を取り入れてくれたら嬉しいですね。
● 今回学生たちが制作したゲームに対し、どのように感じられましたか?
西山氏 かなり頑張って課題を理解しようとしてくれたんだな、というのが伝わってきました。このモンスターギアというタイトルは、もうサービスを終了しているので、こうして学生の皆さんに教材として使ってもらえるというのは有意義ですね。学生の皆さんは、プロジェクトに参加してどう感じましたか。
村上 ゲーム制作の経験は前にもあるのですが、企業様からの課題をもとにつくるのは初めてで、そこが大きな違いでした。UIや操作性などに対して鋭いフィードバックをいただいて、それをもとにどんどん改善していくというサイクルがとても勉強になり、得るものが大きかったと感じています。
外島 私もゲーム制作の経験はあるのですが、以前は大きなチームの中で、先輩の主導のもとに渡されたタスクをこなしていくだけでした。今回は2人1組でしたので、最初から最後まで自分たちの責任でやり遂げるというのが良い経験になりました。
對馬 これまでのゲーム制作では、まず初めにビジュアルサンプルをつくり、そこにもらった素材を当てはめていくという流れだったのですが、今回は最初から素材が提供されていたので、「ここがこうなるんだ」と視覚的にわかり、非常に助かりましたし、つくっていて楽しかったです。
西山氏 いい体験をしてもらえたようですね。こちらとしても学生の皆さんと接する貴重な機会をいただけますし、こうした取り組みを通じてゲーム業界に興味のある人材を増やし、プロフェッショナルの卵たちを育てて日本のゲーム産業を盛り上げていくことに貢献できたら何よりです。しかし、それはそれとして、一番の本音は「セガファンが1人でも増えてくれたら嬉しい」というところでしょうか。今回のプロジェクトに限らず、私が関わってきたすべての取り組みに共通する気持ちですが。
● 今後、ゲーム業界はどのように変化し、その変化についていくには何が必要ですか?
西山氏 これからは、AIとクラウドでしょう。まずクラウドですが、「ハードウェアのスペックに依存してゲームをつくらなければいけない」というのは足かせですよね。足かせというのは全部世の中からなくなっていきます。ストレスがあって、それを取り去る技術があるなら、それは絶対になくす方向へ進んでいくのです。ゲーム開発はまだまだハードウェアに頼りきっているのでクラウド化の流れはいずれ止められなくなっていくでしょう。そしてAIですが、これは間違いなく今後のゲーム業界の行き先を決めていくはずです。日本という国は、1980年頃から続くゲームの老舗です。しかし、各社がそれぞれに売れたせいで、みんなが我流でまったく互換性のない独自開発を進めてしまったのです。その間にアメリカのゲーム開発者たちは、「みんなでいい感じに使えるやつをつくったほうが良くない?」と、さまざまな仕組みを次々に開発し、業界全体で一気に成長していきました。そして日本は、自分たちがつくった囲いの中に取り残されてしまったのです。再びそうならないためにも、AIの活かし方は直ちに見つけておくべきです。「プロンプトエンジニアリング」という言葉がありますが、AIに的確な指令を出し、最適な答えを引き出すスキルは、今後どのような職種においても将来を左右するものとなっていくはずです。
大谷 これから求められるクリエイターとはどんな人物ですか?
西山氏 やりたいことをやりきるために、周りを必死で巻き込める人です。チームがモチベーションを持てるように一生懸命話して、やりたいことを頑張って伝えないと。それから、何があっても言い訳しない。避けられない事情があったとしても、チームで支え合って何としてもやりきる。
そのためには、日頃からの信頼関係づくりも大切です。
今松 一緒に仕事をしていて「この人はすごい」と思うのはどんな人ですか?
西山氏 すごい人というのは、想像を超えてきますよね。ある程度の経験を積むと、誰でも多少なり「こういう時はこうするものだ」という先入観ができてしまうのですが、すごい人はそれを平気で超えてきます。「お前の書いた仕様書がよくわからなかったから、別パターンもつくってみた」って、そっちのパターンが想像よりはるかに面白かったりして、「あの短い時間でどうやってそれをつくれたんだ」と愕然とすることがあります。
● これからゲームの世界を目指す学生たちにメッセージをお願いします。
西山氏 先ほどお話ししたように、今の日本のゲーム産業は、アメリカや中国に敵わない部分もありますが、やはり日本人のモノづくりの姿勢には、独自の素晴らしさがあります。アイデアの斬新さはもちろん、ユーザーの手触りとか、画面情報から受ける心理的反応とか、そこまできめ細かく突きつめられるのは、日本の強さでもあると思います。その日本らしさと自分らしさを存分に活かして、世界中の人々を楽しませてください。
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